一般社団法人PCA おもいやりのちから ベトナムの犬猫肉問題

ベトナムの犬猫肉問題

犬肉は、ベトナム語で Thịt chó です。

元来、中国国境の北部(ハノイなど)で頻繁に食べられていましたが、今では南部のホーチミンでも全土で食べられています。

ベトナムは中国に次ぐ世界で2番目に犬肉消費の多い国となっており、猫食に関しては、世界最大です。ベトナムの猫肉問題は別に記載していますので、メニューよりお選びください。

最近ではグローバル化が進み価値観も変わり、ベトナム市民間での犬肉論争は益々炎上しています。多くの若者は、犬や猫は人間の仲間だという認識でベトナム犬猫産業には著しく反対しています。しかしベトナム国内公衆の場でのデモや啓発活動などは法律で禁止されている為、ペトナムの動物活動家さんたちは主にSNSで啓発や情報共有をおこなっています。

ベトナムは韓国と異なり食用犬繁殖農場が公式に認められていません。

では、どうやって食用の犬や猫を調達しているのでしょうか?

世界愛犬連盟の調査によると、食べられる犬や猫の8割以上は盗まれたペットです。 

その他では、毒矢で捕獲された野良犬だったり、タイ、ラオス、カンボジアなどの近隣諸国から密輸した犬たちです。今やベトナムでは犬泥棒が大きな社会問題へと発展していますが、ベトナムには犬や猫を虐待から守る法制定(動物愛護法など)が存在しない為、犬や猫を焼こうが煮ようが殺そうが何の罪にも問われません。唯一犬泥棒を罪に問うことができるのは、窃盗罪です。しかし、こちらも飼い主が「約1万円の価値が犬や猫にある」と証明(例えばペットショップかのらレシートなど)できなければ処理されません。ベトナムも日本同様、犬猫の法的立場はモノだからです。

ですので、自分の大事な家族犬や猫を盗まれた家族や村の住人たちは、犯人を見つけては皆で制裁を加えます。それしか方法がないのです。

ベトナムでの犬の消費量

現在、毎年約 500 万匹の犬が肉のために殺されています。

誰が犬肉を食べているの?

ベトナムも韓国と同じく犬食をおこなっているのは主に高齢層や貧困層です。ベトナムにおける犬肉の需要は、根拠のない信念に基づいています。ベトナムでは犬肉はタンパク質が豊富で、滋養強壮によいと信じられています。一部のレストランは犬を食べると幸運がもたらされ、より多くの顧客を引き付けることができると主張しています。犬を殴るとアドレナリンが増加し、犬肉がより美味しくなると信じ、殺す前に必要以上の暴行を犬に加えることもあります。犬肉は多くのレストランの看板料理となっています。旧正月の時期、ハノイの犬肉レストランはいつも混み合っています。多くのベトナム人は家の番犬として犬を飼っていますが、客が来ると犬を虐殺しふるまうこともあります。

どのようにしてベトナム犬食は始まったのか

2012年のInternational Journal ではベトナムでの犬の家畜化の初期の状況について以下のように記されています。

ベトナムの犬食習慣は、紀元前 2100 年新石器時代のアンソン遺跡にまで遡ると考えられています。

ベトナム南部ロシアン省北部に位置するアンソンでは、当時住民が犬や豚を飼育していたことが示唆されています。また、ベトナム北部のマンバック遺跡では数頭の飼い犬の化石が発見されています。敷地内には大量の犬の遺体があり、犬が住民の食料源であったと示す屠殺の痕跡も観察されています。豚よりも犬の遺体の方が多く現場で発見されました。

埋葬などの面を見ると人間と犬との深い繋がりを示す犬への特別な扱いの痕跡はありませんでした。

代々、犬は家庭などの番犬として利用されてきましたが、昔は犬には腐った食べものなどが与えられ、人間の家族のように扱われていませんでした。

次第に番犬から人間に崇拝される立場に変っていきました。当時のベトナム人は、塔や家の前に石像の犬を置いて幽霊や悪魔を追い払っていました。

1010年頃、当時のハノイの国王がタンロン城の建設に失敗した際、国王は母犬と赤ちゃん犬が紅河を渡りながらタンロンに向かいヌン山 (現在はホアン ホア タム通り)を走っている夢を見ました。彼はそれを幸運のしるしだと考え、ヌン山に寺院(Puppy Temple)を建て、犬を精霊として崇拝しました。

 

タイー族

犬の崇拝は、少数民族の間でもおこなわれています。タイー族の人々は、家の前に石像の犬(日本の狛犬みたい)を置くことにより風水を高めました。犬の彫刻は祝福をもたらすと信じられています。山岳地帯に住むザオ族は、自分たちの祖先は古代中国の女王と霊犬の間に生まれたと信じています。その為、ザオ族の文化では犬肉消費が禁止されていました。

ザオ族の女性

他のベトナム人は犬の神聖な力を特別の日の特別な犬肉料理として取り入れました。悪いことが起きると犬肉を食べることによって、不運を追い払うことができると信じ、長生きできるとも信じられていました。犬食は、葬式、命日、結婚式の仕出しにも使われています。ベトナム北部では、祖先を崇拝するほか、雨を降らせたりする際にも、儀式として犬が犠牲になりました。

これらの特別な日以外にも、人々は犬を食べています。犬肉は通常、旧暦の月初めに食すと縁起が悪いとされており、月の終わりや年の終わりまでに消費します。これは、真っ白な毛と血のように赤い鼻を持つ犬が悪魔の化身であるというベトナムの民話に由来しています。この悪魔は、旧暦の中旬満月の夜に元の姿に戻ります。

ベトナムの狛犬

世論調査

2022年1月にグローバル動物福祉組織Four Paws がおこなった調査では

ベトナム人口のうち:

・95% が「犬肉食はベトナム食文化ではない」

・88%が「ベトナム犬猫肉産業の廃止を願っている」

と回答しました。

この世論調査は、異なる年齢や職業そして性別/婚姻状況のハノイ、ダナン、ホーチミン在住者を対象におこなわれました。

ベトナムにおける大多数の人口は犬や猫を食べません。そしてベトナム政府が犬猫肉の廃止に向けて動き出すことを心から待ち望んでいます。

他国もそうですが、特にベトナムの犬猫肉産業は、動物の福祉面以外にも狂犬病などを含む公衆衛生面でも多くの脅威をもたらしています。

ベトナム犬猫肉食は依然存在していますが、犬猫食をおこなっているベトナム人はわずか 6.3% です。

ソース:

Four Paws International

World Dog Alliance